Random Walker Log's Log

二度と見ない系ログファイル

20151213 非言語コミュニケーションをした話

引っ越す前に住んでいた場所の近くに行ってきた。ついでに中本の限定メニューを食べたり、電器屋でパソコンを物色したりした。
いらないなんて言いつつも、これらを俺も買えるかもしれないと思うと反射的にワクワクしてしまう。
帰ろうと思った時にはもう夜になっていて、駅の中は俺と同様家路につこうとする人たちでごった返していた。

ガヤガヤガヤガヤ――――
ガヤガヤガヤガヤ――――

雑踏の音と話し声がこだましている。誰が何をしゃべっているのか分かったものではない。
ゆっくり歩いていると誰かが俺の肩を叩いた。振り返ってみると小柄な老婆がニコニコしていた。

ガヤガヤガヤガヤ――――

老婆が何か話しかけているが、雑音にかき消されて何と言っているのかわからない。

「ごめんなさい、聞き取れなかったんですが」

ガヤガヤガヤガヤ――――

老婆はしゃべり続ける。さっき言ったことを繰り返してくれたのか、それとも向こうにも俺の声は届いていなくて、そのまま話の続きをしてくれているのかわからない。
それでも、老婆はずっとニコニコしているので、それで満足なのかもしれない。
悪い気はしないし、しばらくこの人につきあってみるか、と思い、俺もそのまま話を続けた。

 「へぇ、そんなことがあったんですか」

ガヤガヤガヤガヤ――――

 「まあ、僕らくらいの世代になると老齢年金なんて期待できないですし」

ガヤガヤガヤガヤ――――

 「アスコリ・アルツェラの術っていうのがあって、目をつむってから、一様有界……同程度連続……って唱えて目を開けると、一様収束部分列を召喚できるんですよ。便利だからおばあちゃんも今度やってみたら」

老婆はニコニコしながら何かを話している。俺もニコニコしながら何らかの言葉を話している。お互い何を言っているのかは分かっていなかったはずだけど、そこには会話があった。心と心のコミュニケーションがあった。その一方で、俺はてきとうなことをしゃべりつつも、明確な嘘を言ってはいけないというルールを自分自身に課していた。それは、仮に老婆が俺の話を聞き取っていた場合に騙すようなことになってはならないという懸念でもあったし、このコミュニケーションにおいて表情や身振りだけでなく言語においても誠実であることが何らかの意味を成していてほしいという願望でもあった。

ガヤガヤガヤガヤ――――

ふと時計を見ると、乗るべき電車の発車時刻が近づいていた。老婆には悪いが、ここらで話を中断してホームへ向かうことにした。

 「それじゃあ、僕はこれで。おばあちゃんもお元気で。5mくらい先に地雷が埋まってるから、ちゃんと避けてね」

と言いながらにっこり笑って5本の指を見せた。老婆も同様ににっこり笑って手を振った。ホーム付近は人混みがさらにひどかった。

ガヤガヤガヤガヤ――――
ガヤガヤガヤガヤ――――

雑踏の音と話し声以外、何も聞こえなかった。俺には何も聞こえなかった。何も聞こえなかったんだ。俺は悪くない。